Kac's counting formula

Kac-rice formula 関連の日本語記事が無かったので自分の理解を深めることを兼ねて記事を書こうと思います.

ここでは,参考文献 [1] の記述の順番通りに話を進めます.最初は Kac's counting formula から.

準備

実軸上の区間 \( I \) がある.ここで,次のような滑らかな関数を考える.
\[
f_0,f_1,...,f_N:I\rightarrow \mathbb{R}
\]

また, \( k>0 \) に対し同じ確率空間  (\Omega, \mathcal{A}, {\bf P} ) のおいて平均0, 分散 \( v_k > 0 \) のそれぞれ独立している正規分布に従う確率変数 \(X_k\) が与えられたとき,次の線形結合 \(F(t)\) を作ることができる.
\[
F(t)=F_\omega(t)=\sum_{k=0}^{N}X_k(\omega)f_k(t)
\]

Dirac's delta function approximation

任意の  \epsilon に対して  \delta_\epsilon: \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} を定義する.

\[
\delta_\epsilon(y)= \begin{cases}
\frac{1}{2\epsilon}, |y|<\epsilon \\
0, otherwise
\end{cases}
\]


このとき,任意の \( C^1 \) 級関数 \( f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \) に対して次の式が成り立つ.

\[
\lim_{ \epsilon \rightarrow 0 } \int_{ \mathbb{R} } \delta_{ \epsilon(t) } f(t) = f(0)
\]

\(I\) の区間において, \(F\) の値が \(0\) から \(\epsilon \) の間に存在している数を数える関数を \( Z_\epsilon (F, I) \) とすると次のように定義できる.

\[
Z_\epsilon(F,I):=\int_I \delta_\epsilon (F(t))|F'(t)|dt
\]

convenient の定義

1. 次の条件を満たす時,\( C^1 \) 級関数 \( f:[a,b] \rightarrow \mathbb{R} \) は convenient という

  •  f(a)\cdot f(b) \neq 0
  •  f の全ての0は非退化である. (例: \( f(t)=0 \) なら \( f'(t)\neq0 \) )

2.  C^1 級関数  F: \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} proper で全ての零点において非退化であるなら,  Fconvenient という


命題 (Kac's counting formula)

区間  I 上において f=0 の数は  Z(F, I) で表される.

1. \( C^1 \) 級関数 \( F: [a,b] \rightarrow \mathbb{R} \) が convenient ならば次の式が成り立つ
\[ Z(F, [a,b] )= \lim_{\epsilon \rightarrow 0} Z_\epsilon (F, [a, b]) \]
2. \( C^1 \) 級関数  F:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}convenient ならば次の式が成り立つ.
\[ Z(F, \mathbb{R} )= \lim_{\epsilon \rightarrow 0} Z_\epsilon (F, \mathbb{R}) \]
3. 1., 2.のような F に対して,\( \nu \) を  F=0 の数, \( \kappa < \infty \) を臨界点の数とするとどんな \epsilon に対しても次の式が成り立つ.
\[ Z_\epsilon (F, I) \leq \nu + 2 \kappa \]

証明

1.  Fconvenient なので,有限個の零点  \tau_1 < ... < \tau_\nu を持つ.  F の臨界点の集合  C はコンパクトであり, F の零点集合と互いに素である.
よって,
\[ \epsilon_0 := \min_{x \in C} |F(x)| > 0. \]
 \epsilon \in (0, \epsilon_0) を固定すると,
\[ \int_{a}^{b} \delta_\epsilon (F(t))|F'(t)|dt = \frac{1}{2 \epsilon} \int_{ |F|< \epsilon } |F'(t)|dt. \]
開集合  {|F| < \epsilon } の連結成分は,臨界点集合と互いに素であり, |F(c)|=|F(d)|=\epsilon となるような開区間 \( (c, d) \subset
[a,b] \) である.そのように取った区間 F'(t) の値は次のようになる.
\[ |F(d)-F(c)|=\int_c^d|F'(t)|dt = 2\epsilon. \]

 0 \leq i \leq \nu においてある零点  \tau_i は,ある開区間  (c_i, d_i) に含まれると考えることができる(次のイメージ図を参照).
f:id:t-tatsukawa:20170626020931p:plain

よって
\[ \int_a^b \delta_\epsilon (F(t))|F'(t)|dt = \frac{1}{2 \epsilon} \sum_{i=1}^\nu \int_{c_i}^{d_i} |F'(t)|dt = \nu = Z(F, [a, b]). \]

2.  Fproper なので, |t|>a で |F(t)|>1のようなコンパクト区間 \( [-a, a] \) が存在する.この  F の制約は convenient であり,
\[ Z(F, [-a, a])=Z(F,\mathbb{R}). \]
次に, \epsilon \in (0, 1)とすると,
\[ \int_\mathbb{R} \delta_\epsilon(F(t))|F'(t)|dt=\int_{-a}^{a}\delta_\epsilon(F(t))|F'(t)|dt. \]

よって,
\[ \lim_{\epsilon \rightarrow 0} \int_\mathbb{R} \delta_\epsilon (F(t))|F'(t)|dt=\lim_{\epsilon \rightarrow 0} \int_{-a}^{a} \delta_\epsilon(F(t))|F'(t)|dt=Z(F, [-a,a])=Z(F,\mathbb{R}). \]

3.  F は有限個の臨界点を持つため,ロルの定理よりどんな  c \in \mathbb{R} に対して, F(t)=c となるような有限個の解を持つ.
\epsilon > 0 を固定すると,集合  {|F|<\epsilon} の連結成分は, |F(a)|=|F(b)|=\epsilon であるような区間  (a, b) に到達する. |F(t)|=\epsilon は有限個の解を持つため, {|F|<\epsilon} の有限個の成分は次のように表される.
\[ J_l=(a_l,b_l), l=1,...,L. \]
よって,
\[ \int_I \delta_\epsilon (F(t))|F'(t)|dt=\frac{1}{2 \epsilon} \sum_{l=1}^L \int_{J_l} |F'(t)|dt. \]

 k_l J_l 上の  F(t)turning point の数とする.
ある J_l において  F(t)turning point を含まないなら  F(a_l)F(b_l)<0 かつ  J_l は固有の零点を持つ.
\[ \sum_{l=1}^L \int_{J_l} |F'(t)|dt=2 \epsilon. \]

ここで  L_0, L_1 を次のように定義する.
\[ L_0 := \{l=1, ..., l; J_l \text{は turning point を含まない} \} \]
\[ L_1 := \{l=1, ..., l; J_l \text{は turning point を含む} \} \]

上の議論から  |L_0|=\nu,  |L_1| \leq \kappa が言える.よって,

\[ \frac{1}{2\epsilon} \sum_{l=1}^L \int_{J_l} |F'(t)|dt = \frac{1}{2\epsilon} \sum_{l\in L_0} \int_{J_l} |F'(t)|dt+\frac{1}{2\epsilon} \sum_{l\in L_1} \int_{J_l} |F'(t)|dt\\
=\nu+\frac{1}{2\epsilon} \sum_{l \in L_1} \int_{J_l} |F'(t)|dt. \]

 l \in L_1 の開区間の中で  Fturning point を次のように置く.
\[ t_1 < ... < t_{k_l} \]

よって,
\[ \int_{J_l}|F'(t)|dt=|F(a_l)-F(t_1)|+F(t_1)-F(t_2)|+...+|F(t_{k_l})-F(b_l)| \leq 2\epsilon (k_l + 1). \]

なので,
\[ \frac{1}{2\epsilon} \sum_{l\in L_1} \int_{J_l} |F'(t)|dt \leq \sum_{l\in L_1} (2k_l + 1) \leq \kappa + |L_1| \leq 2\kappa. \]


参考文献

[1] ON THE KAC-RICE FORMULA


余談

久しぶりに hatenablog に記事を書いたが,数式の記法がややこしい上によくわからない状態で正しくレンダリングされない問題があり,かなり辛い感じを受けた.
`\[ \eta \]|`が上手く表示されないっぽい.